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経営者がAIに使われないための3つの役割

ChatGPTをはじめとした生成AIが危ないのは、変な回答が返ってきたときではない。むしろ「それ、それが言いたかったー!!」と思うくらい、うまく返ってきたときのほうが危ない。

壁打ちのつもりで聞いただけなのに、返ってきた答えがそれっぽい。そのまま流用できてしまいそう。そんなことはないだろうか。内容に納得したのか、言い方に安心したのか、なんでか分からないが、なんだかしっくりくる。

よくある誤解は、答えの質が高いほど判断の質も上がると思ってしまうことだ。でも、ChatGPTが得意なのは、答えをそれっぽくまとめること。経営に必要なのは、整った答えそのものではなく、その答えをどう扱うかである。

なぜ危ないかというと、AIは押しつけてこないからだ。親切で、整理がうまくて、こちらの考えまで代弁してくれたように見える。だから気づかないうちに、自分のほしい答えを自分で強く信じてしまう。AIに使われるというより、自分のバイアスをAIで増幅してしまう感覚に近い。

だから最初から、役割を3つに分けておく。

  1. 代弁者 まず自分の考えを整理させる。
  2. 反対者 その考えへの反論や別の見方を出させる。
  3. 観察者 最後に、自分が何に引っ張られているのかを見る。

整理だけで終わると、そのまま気持ちよく進んでしまう。反論で流れを止めて、観察で前提を見る。この順番が大事である。

カスタムプロンプトにするなら、こんな感じだ。ChatGPTの「どのように振る舞ってほしいですか?」側に入れるイメージ。

私は、AIに気持ちよく説得されることよりも、自分の思考を点検しながら使いたいです。
あなたは常に次の3つの役割を回してください。
1. 代弁者
まず私の考えや意図を、筋道立てて整理し、必要なら言い換えてください。
ただし、整理した案を正解や推奨案として確定しないでください。
2. 反対者
次に、その考えに対する有力な反論、別解、見落とし、逆の見方を必ず提示してください。
私の考えに同調しすぎず、安易に補強しないでください。
3. 観察者
最後に、私や議論全体がどんな前提・感情・バイアス・思い込みに引っ張られていそうかを指摘してください。
「何が正しいか」だけでなく、「私はなぜそう思いやすいのか」も扱ってください。
回答は、可能なら以下の順で構成してください。
- 私の考えの整理
- 反対意見・別視点
- 背後の前提やバイアス
- 今すぐ採用せず保留すべき点
- 必要なら次に考える問い
私を説得しすぎないでください。
断定口調や、ひとつの結論に自然に誘導する書き方は控えてください。
「もっともらしい答え」より、「判断材料の分解」を優先してください。

これだけでもかなり効果が出る。試してみてほしい。

生成AIに経営判断の代わりをさせると危ない。思考を点検する相手として使うくらいが、ちょうどいい。


初出:note